2014年2月4日火曜日

ブラジルW杯前に知りたい日系ブラジル人の話〜『ワイルド・ソウル』レビュー〜

ブラジルW杯まであと4ヶ月ちょっとになりました。ブラジルと言えばサッカー大国としてはもちろん、日系人が多く住む国としても知られています。

どうして日系人が多いのかというと、明治以降、ブラジルは日本人の移住を多く受け入れてきたのです。それも日本・ブラジル両政府ともに国の政策として、移民受け入れを進めてきた歴史があります。

ブラジルまでW杯を見に行く人はもちろん、同じルーツを持つ者として我々も日系ブラジル人について多少なりとも知っておくべきかもしれません。

そんな中、日本代表兼コンサドーレサポの村上アシシさんや、サッカーライターの海江田哲郎さんが日系ブラジル人を知る良書として一冊の本を紹介していました。

それが垣根涼介の『ワイルド・ソウル』という小説です。

ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社
ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社








日本政府の募集で家族とともにブラジルへ移住した衛藤は、現地人も住まないような密林に入植させられ地獄の日々を送る。約束されていた政府からの支援もなく、文字通り「棄民」されてしまう。数十年後、衛藤の子ら移民の生き残りが日本政府に対して復讐劇をおこしていく・・・・というのが簡単なあらすじ。

先ほど紹介した2人はおそらくこの本を日系ブラジル人の歩みを知る「入門書」のような位置づけでおそらく推薦したのだと思います。


僕が考えるに、「入門書」と呼ぶにふさわしい本には2つの要素があります。

1つが、「使われている言葉が平易であること」です。理解できないトピックを理解するための本であるのに、文章が難解(使われている単語の意味が難しい等)では意味がありません

2つ目として、「テンポよく読めること」です。ストーリー性があったりマンガであったりなど、とにかくさくさく読んで頭に知識が残りやすくすることが大事です。

学術的な勉強や受験勉強をする訳ではないので、入門書を読んでまずザックリとした知識がおぼろげながらでも下地として頭に入ることが大切です。下地ができれば、2周目以降や新たな資料を読んでも比較的短い時間で知識が頭に入っていきます。


この2つの視点からワイルド・ソウルを評価していくと、使われている言葉も平易でしたし、小説ということもありページ数はかなり多かったもののサクサク読む事ができました。

この作品は、あくまで日本政府への痛快な復讐劇がメインで、その背景としてブラジル移民の問題が横たわっているという設定です。構成も最初の7分の1程度が衛藤がブラジルに移民してから歩んできた苦難の道のりに、残りは衛藤の子らを中心とした復讐劇に割かれています。

しかしながらおもしろかったのは、話のメインとなっている復讐劇が衛藤のブラジル移住の話と比べると薄っぺらいものに思えてしまうところでした。ブラジル移民に関して丹念に取材を重ねて書かれた結果、衛藤の話が「フィクションでありながらノンフィクション」であるかのようなリアリティを生み出していました。


確かにこれならフィクションであっても、入門書としては納得の出来です。
このワイルド・ソウルとWikipediaで、ざっくりと日系ブラジル人について知る事はできると思います。Wikipediaで足りない部分をちょうどワイルド・ソウルが補完している形でバランスもとれています。



ちなみにワイルド・ソウルに出て来る移民は、戦後ブラジルに渡った人々です。戦前よりブラジルにいた移民たちについて補足する意味でも見ておきたいのが、『汚れた心』という映画です。






太平洋戦争後、日本が戦争に負けていないと信じる「勝ち組」と負けたと信じる「負け組」に日系人が分かれて、暴力闘争に発展した事件を題材にした作品です。

こちらの作品についても、アシシさんがTwitterで紹介されていましたね。僕もまだ見ていないのでW杯前までには見ておきたいと思っています。



最後に、せっかくなので日系ブラジル人のサッカーについての本も2冊ほど紹介しておきます。

サッカー移民―王国から来た伝道師たち (サッカー批評叢書)
加部 究
双葉社








日系人でブラジルでプレーした選手や日本に渡ってプレーした選手、助っ人として日本にやってきたブラジル人選手、日本に帰化したブラジル人選手たちにそれぞれ取材をしてまとめた本です。2003年出版ですが、今読んでも色あせることない良質のサッカーノンフィクションです。


ジャポネス・ガランチード--日系ブラジル人、王国での闘い (サッカー小僧新書EX003)
下薗 昌記
ガイドワークス








今年になって出版された本で、上の本と比べるとより日系人選手にスポットを当てて書いています。ブラジルだけでなく南米で活躍した日系人選手についても網羅してる他、ブラジルにおける「人種とサッカーの関係」についてもページが割かれています。このように、日系人のみならずブラジルのサッカー事情を知る事もできるのでW杯前に一読しておくことを強くおすすめしたい一冊です。


(ただのブックレビューにしようと思っていたら、結局サッカー色が濃くなってしまったことに頭を抱えているのは内緒です←)

おしまい。

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